【インタビュー】ビル・トッテン×大学生


私は歩きます

―― どうしてお庭を畑になさったのですか?

ビル・トッテン(以下トッテン) : 以前はこの庭はテニスの練習場でした。毎日、2時間くらい練習していました。でも、テニスをやった後の会話は自慢か不満だけ(笑)。もったいない。だから全部畑に造りかえました。だいたいこの畑で、私と家内の1年分の野菜はまかなえます。美味しいし、農薬ゼロだから安心、汗流して健康、しかも楽しい。いいことずくめです(笑)。


―― 駐車場の中も、ほとんど農作業の物置き場になっていますね。

トッテン : 車は持っていません。ほとんど歩きです。だからガレージもいりません。一昨年まで、我が家のガレージは若者がやっている有機野菜の店「ワンドロップ」に貸していました。今は大きくなって向こうの商店街に店を出しています。


―― 歩くのがお好きなんですか?

トッテン : はい。大好きです。涼しくなると京都駅まで歩きます。


―― 京都駅!?・・・ずいぶん遠いですね。

トッテン : そうですね、6〜7kmくらいですか。ここの通りは通称、社長さん通り。皆さんも良く知っている大きな会社の社長さんの家がずらっと並んでいます。私は毎日この辺を散歩します。だけど、この通りに住んでる社長さんとは誰とも会いません。


―― ええ?どうしてですか?

トッテン : 皆さん、黒塗りの車が迎えにきます(笑)。そんな暮らしは、私はしたくない。私は歩きます。買い物も全部近くの店。だから近所の人とはみな友達、楽しい人たちばかりです。



私がテロリスト(笑)!?

―― トッテンさんは、日本に帰化されたそうですが?

トッテン : 2006年8月に日本の国籍を取りました。もちろんずっと以前から永住権は持っていましたけど。日本に住んでもう40年経ちます。おお、ちょうど明日、8月26日です。40年前の1969年8月26日に初めて日本に来ました。


―― どうして日本の国籍を取りたいと思われたんですか?

トッテン : 次女がハワイで結婚式を挙げました。私たち夫婦もついでにカウアイ、マウイ島を巡りましたが、行く先々の飛行場で別のゲートに連れ込まれ、徹底的な検査と厳しい尋問をされました。テロリストのブラックリストに私の名前が載っていたのです。私がテロリスト(笑)!?冗談じゃない。・・・理由は単純です。これまでの著作で私はずいぶんアメリカの批判を行ってきたからです。民主主義の国アメリカが、政府の批判を行っただけでテロリスト扱い?・・・どこが民主主義国家ですか。・・・アメリカには以前から絶望していました。例えば、第二次大戦でアメリカは国際協定に反して多くの日本の国民を殺した。ナガサキ、ヒロシマ、東京大空襲・・・。なぜかというと、国民が認めている日本の政府が戦争を行った、戦争の責任者である日本国民が死ぬのはやむを得ないという理屈です。もしそうなら、ベトナム、アフガン、イラク戦争もアメリカ市民である私たちの責任ということになる。私は戦争なんか絶対に認めない。だからアメリカの国籍を捨てたかったのです。飛行場のテロリスト扱いでカンニン袋の尾が切れました。私は日本に国籍を拾っていただいたのです。もう二度とアメリカの土を踏むことはないでしょう。



アメリカは海賊の国、日本はお互い様の国

―― 最初はどういう理由で日本に来られたのですか?

トッテン : 働いていた会社から市場調査のために派遣されました。特に希望していたわけではありません。ただ、大学院で経済を専攻し、その時、教授から孔子の『論語』を読むように薦められ、とても惹かれました。孔子の学問は王様や支配者に向けたものです。「あなたは天の運命により王様の地位を得た。天から授かった地位である。だからその運命に感謝して、我がままをやめ、社会や民のために尽くさなければならない」。日本にきてみて、実際にそういう経営を目の当たりにしました。日本は戦前までこういう儒教を軸とする道徳教育を行ってきたため、戦後の高度経済成長の偉大な経営者たちは皆、この儒教の教えを守ってきました。松下幸之助、立石一真、出光佐三、本田宗一郎・・・。儒教的経営で日本は成功し、大きな経済成長を果たしたのです。日本で商売をしてみたいと思いました。


―― アメリカと日本ではビジネスのやり方が違うんですか?

トッテン : 違いますね。アメリカは海賊の国(笑)。基本的には弱肉強食です。“トッテン”はノルウエーの名前です。ノルウエーはバイキングの国。その海賊がフランスを侵略して造ったのがノルマンディ。やがてイギリス、アイルランドと占領し、アメリカへ移住しました。だから海賊の血が今も続いている(笑)。強い者が勝って当然。商売で成功するには相手のシェアを征服し買収する。これがアメリカの基本的ビジネスです。


―― なんか分かりますね。では、日本のビジネスは?

トッテン : 日本は「お互いさま」の国です。よく台風がやってくるので皆で協力して村を守る。農業用の水路も皆で造る。わらぶき屋根のふき替えも村人皆なで手伝う。商売もそうです。お互いさま。だから私の会社もそうです。社員がお客さんのため一生懸命仕事をすると、お客も喜び、顧客が増える。その結果、会社が儲かり社員の給料が上がる。だからもっとお客さんに尽くす。社員は株主のためではなく、自分のためにお客さんに尽くすのです。日本は聖徳太子の昔から「和をもって尊しとなす」の精神でやってきました。ここが一番大きな違いです。


―― でも、トッテンさんは日本で40年も商売をやってこられて、そういう日本の良い伝統が失われてきていると感じませんか?

トッテン : ダメですね(笑)、今はほとんど失われています。・・・日本は昭和20年、終戦からそういう道徳教育を一切やめてしまいました。聖徳太子の精神は敗戦とともに消えてしまった。




PROFILE

Bill Totten | ビル・トッテン

株式会社アシスト代表取締役・評論家。2006年8月、日本国籍を取得。カリフォルニア州に生まれる。経済学博士。1969年に来日。1972年、パッケージソフトウェア販売会社「アシスト」を設立。日米問題についての著書を精力的に執筆。テレビや講演でも活躍。

ビル・トッテン コラム 「Our World

<著書>
日本は悪くない』高橋吾郎との共著ごま書房(1990)
転機に立つ日本―日本人よ、勤労の精神を忘れるな』光文社(1992)
日本人はアメリカにだまされている』ごま書房(1994)
うろたえるな、日本』(大前研一、田原総一朗との共著)ごま書房 (1994)
日本はアメリカの属国ではない』ごま書房 (1997)
日本はアメリカに負けていない』ごま書房 (1998)
論語に学ぶ人の道』(船井幸雄他との共著)ビジネス社(1999)
「脱アメリカ」が日本を復活させる』徳間書店(2000)
銀行は強盗、外資はハイエナ―日本再生の処方箋』小学館(2002)
日本は略奪国家アメリカを棄てよ』ビジネス社(2007)
愛国者の流儀』PHP研究所(2008)

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