コラボレーション [対談 : 佐藤洋平 × 竹下景子]


一番苦労してるのが若い親の世代(笑)

竹下 : 3年前から、北海道の「富良野自然塾」のインストラクターをさせていただいています。これは森林の再生を目指したNPOなんですが、塾長が脚本家の倉本聰さん。倉本先生から声をかけられて、思わず「はい!」と・・・(笑)。でも、研修でいろんなことを知りました。人間が生きていくうえで最も必要なものは空気と水。そのことを普段私たちは忘れてしまっている。その空気と水を生んでいるのが森、それも森の葉っぱ・・・。私たちは木材になる幹ばかり見て、葉っぱのことを忘れている。その葉っぱのために森を造ろうというのが「富良野自然塾」のメッセージなんです。


佐藤 : ああ、素晴らしいですねえ。


竹下 : 私は、主に夏休みの「3世代ファミリーキャンプ」で環境教育プログラムを受け持っているんですが、3世代ですから、子供と親たちに加えておじいちゃんおばあちゃん世代の参加が条件なんです。ところが、おじいちゃんおばあちゃん世代はすぐに自然に溶け込むんですね。体験豊富だから、木のことも外遊びの仕方もよく知っている。子供たちもすぐに野性化して目が輝いてくる。一番苦労してるのが若い親の世代(笑)。


佐藤 : はっはっは、確かにそうでしょう。自然の中で過ごした経験がない(笑)。


ハチドリのひとしずく

【写真】竹下 景子

竹下 : 生活がどんどん豊かで便利になっていった世代ですから、自然から切り離されて、自然のありがたさも忘れてしまっている。環境問題にしても知識として分かってはいるのだけれど、やむをえないと思ってしまっている。私もこういう自然と触れ合う機会を与えられて、より切実に森や自然のことを考えるようになりました。でも、世の中はみんな自分の今日明日のことで精一杯、自分とは関係ない未来の自然のことなんか考える余裕もないって言うのが現実です。そう思うととても悲観的な気分になりますけど、手をこまねいてばかりではいられない。「ハチドリのひとしずく」じゃないけど、私も何かやらなくてはと・・・。


佐藤 : 今から40年ほど前、ローマクラブという賢人会議が同じことを言っていますね。ローマクラブの『成長の限界』という世界中に衝撃を与えた本の中に、「人間の視野」というグラフが出てきます。縦軸に、家族のこと、近所のこと、自分たちの町、県、国、世界と広がっていく空間軸を取ります。そして横軸に、明日、明後日、来週、数年後、数十年後とだんだん長くなる時間軸を取ります。そうすると、人間の関心事は自分の身近な空間の短い時間に集中します。自分や家族という小さな空間の明日、明後日のことばかりに関心が集まり、世界とか地球という広いエリアの数十年先のことになると、関心を持つ人は急激に少なくなっていくというグラフですね。


【グラフ】人間の視野

竹下 : ああ、・・・なるほど、分かりやすいですね。


【写真】佐藤 洋平

佐藤 : 貧しい国の人たちは家族を養うために、明日、明後日の食料や仕事のことで頭が一杯です。ですから、ほとんどの人の関心はグラフの左下のエリアに集中しています。しかし、日本はこんなに豊かになったんですから、もう少し広いエリアで数十年先のことまで考える人が出てこないといけませんね。石油による大量生産と大量消費が経済成長の証であり、誰もそれが幸福への道なんだと信じてやってきたわけですが、今、その経済成長のひずみが地球全体に広がってきた。数十年先にはそのリスクが家族にまで及んでくるかもしれません。世界全体の数十年先を考えるのは日本など先進国の役割でもあるわけです。だから、たとえ「ハチドリのひとしずく」でもやることが大切だと思いますね。



対談年月:2008年7月




PROFILE

佐藤 洋平 | さとう ようへい

東京大学名誉教授、 武漢測絵科技大学名誉教授、 北京師範大学客座教授、(財)日本水土総合研究所理事、農学博士。
「環境保全型農業事典」(石井龍一(代表)編著、分担執筆、丸善(株)、平成17年)、「農学・農業教育・農業普及」(祖田修(代表)編著、分担執筆、農林統計協会、平成17年)、「Sustainable Agriculture in Rural Indonesia」(Eds. Y. Hayashi, S. Manuwoto, S. Hartono), Gadjah Mada University Press, 2003)、「環境科学基礎」(武内和彦(代表)編著、実教出版、平成15年)、「改訂 農村計画学」(農業土木学会編、農業土木学会、平成15年)など。

現在の研究内容
地域資源、そのなかでも土地資源および水資源について、その利用調整および管理に関する研究を計画論的視点から一貫して行っている。現在は、資源環境計画学としての新しい体系を構築することを試みている。

竹下景子 | たけした けいこ

1953年9月15日生まれ 愛知県名古屋市出身
1973年、NHK『波の塔』でのデビュー以来、クイズ番組『クイズダービー』やドラマ『北の国から』、映画『男はつらいよ』など、多数の作品に出演。
最近の主な作品は、ドラマ『父からの手紙』『三十万人からの奇跡』、舞台『御いのち』など。
舞台『朝焼けのマンハッタン』『海と日傘』にて第42回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。

テレビ・映画・舞台出演の他、2005年に開催された「愛・地球博」では日本館総館長を務め、「世界の子どもにワクチンを日本委員会」ワクチン大使や国連WFP協会(国連世界食糧計画)顧問を務めるなど幅広く活動している。

http://www.takeshitakeiko.net/

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