コラボレーション [対談 : 佐藤洋平 × 竹下景子]


国内の農地だけだと昭和20年代の食事に!?

竹下 : 最近、原油価格の高騰にともなって、小麦なんかも相当値段が上がっていますけど、このまま上がり続けたりすると、日本の国は大丈夫なんでしょうか。


佐藤 : うーん、難しいですねえ。今の農業は完全に石油に依存していますからね。仮に経済が悪化して農産物の輸入ができなくなると、国内の農地だけでは今の人口を維持することは難しいですね。これは農水省の「わが国の食料事情」というサイトにも載っていますが、国内だけの農地で全国民が生きていくためには、戦後、つまり昭和20年代の食事(約2020kcal)に戻らなければならない。朝昼晩ともほとんどイモを中心とした食事になります。肉は9日に1回、卵は7日に1個、牛乳は6日にコップ1杯といった感じです。


竹下 : えー、どうしましょう!夫(カメラマンの関口照生氏)は昭和13年生まれで、戦後の食糧難を体験しているんです。子供の頃はまずいイモばかり食わされたって。だから、今でもイモやカボチャは大嫌い(笑)。


佐藤 : ええ、私も昭和17年生まれです。だからイモやカボチャは大っ嫌い(笑)。・・・今の日本人は平均約2600 kcal採っていますから、2020kcalっていうと、かなり貧しい食事となります。この計算は石油を使った生産高ですから、石油がなくなれば農産物はもっと減るでしょうね。国民が平等に少ないカロリーを分け合うことができればいいのですが、お金持ちの人はたくさん食べるでしょうから、食べられない人も当然出てきますね。


【図】国内農地のみで食料を供給する場合の1日の食事メニュー例


日本は約1200万haを海外の農地に頼っているく

竹下 : たいへんなことになりそう・・・。これは日本だけの問題なのですか?


【写真】竹下 景子

佐藤 : いや、お隣の韓国はもっと深刻です。国会議員の話では、アフリカのセネガルに200万haの農地を買う交渉を進めているようですね。生産高の25%はセネガルに、75%を韓国がもらうという話だから、なかなか難航しているようです。中国も食糧輸入国になりましたが、世界的な食糧の高騰を受けて、最近では補助金の増額や輸出規制などによる国内自給政策に切り替えました。ただ、大豆だけは輸入するらしい。ブラジルでの増産量分は全部中国が輸入しています。


竹下 : ・・・そうすると日本は・・・。


佐藤 : 日本は国内の農地(約470万ha)の2倍半、約1200万haを海外の農地に頼っています。ですから、韓国のように外国で農地を求めるとしたら1200万ha要ることになります。


竹下 : ・・・とても無理ですね。


佐藤 : ええ、だから日本人は食生活を変えないといけない。肉食中心の食生活からお米を主体とした食生活へね。ただ現在の食事の栄養のバランスはよくとれていて、日本の食事は世界の理想とも言われていますからね。世界一の長寿国ですしね。ただ、食べ残しが多い。残飯です。だいたい生産した量と同じくらいの農産物をゴミとして捨てているんじゃないですか。


竹下 : ・・・もったいない。


【写真】佐藤 洋平

佐藤 : どうして人間は豊かになると肉や魚をたくさん食べるようになるんでしょうねえ。中国も今すごい勢いで経済が成長していますが、同時に肉や魚の消費量が急激に増えている。それが世界の食糧需給の逼迫の一因ともなっている。どこの国でも豊かになると肉食に変わる。これ、不思議ですね。何故だかよく分かっていないらしいんですよ。


竹下 : それは、・・・美味しいからじゃないんですか(笑)?


佐藤 : うん、確かに美味しい(笑)。でも、家畜を育てるのにたくさんの穀物を投入しなければならない。ウシの生体重1キログラム増やすのに7倍くらいの穀物が要ることになる。日本も飼料の大半を輸入している。飼料を育てるにも大変な量の水や石油を使います。


竹下 : あ、それで水もたくさん輸入していることになると・・・。


佐藤 : そう、バーチャル・ウォーター(仮想水)ですね。食料を輸入するということは、それを育てるのに要したその国の水や、機械で収穫するときに使う石油を輸入していることになる。だから、肉食を多くしたり、残飯が増えたりするということはそれだけ石油の消費を早めていることにもなります。



対談年月:2008年7月




PROFILE

佐藤 洋平 | さとう ようへい

東京大学名誉教授、 武漢測絵科技大学名誉教授、 北京師範大学客座教授、(財)日本水土総合研究所理事、農学博士。
「環境保全型農業事典」(石井龍一(代表)編著、分担執筆、丸善(株)、平成17年)、「農学・農業教育・農業普及」(祖田修(代表)編著、分担執筆、農林統計協会、平成17年)、「Sustainable Agriculture in Rural Indonesia」(Eds. Y. Hayashi, S. Manuwoto, S. Hartono), Gadjah Mada University Press, 2003)、「環境科学基礎」(武内和彦(代表)編著、実教出版、平成15年)、「改訂 農村計画学」(農業土木学会編、農業土木学会、平成15年)など。

現在の研究内容
地域資源、そのなかでも土地資源および水資源について、その利用調整および管理に関する研究を計画論的視点から一貫して行っている。現在は、資源環境計画学としての新しい体系を構築することを試みている。

竹下景子 | たけした けいこ

1953年9月15日生まれ 愛知県名古屋市出身
1973年、NHK『波の塔』でのデビュー以来、クイズ番組『クイズダービー』やドラマ『北の国から』、映画『男はつらいよ』など、多数の作品に出演。
最近の主な作品は、ドラマ『父からの手紙』『三十万人からの奇跡』、舞台『御いのち』など。
舞台『朝焼けのマンハッタン』『海と日傘』にて第42回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。

テレビ・映画・舞台出演の他、2005年に開催された「愛・地球博」では日本館総館長を務め、「世界の子どもにワクチンを日本委員会」ワクチン大使や国連WFP協会(国連世界食糧計画)顧問を務めるなど幅広く活動している。

http://www.takeshitakeiko.net/

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